口腔フローラの改善

口腔フローラとは?

皆さんご存知ですか?
お口の中には300~700種類の細菌が生息していると言われています。
プラーク1mgには1億個以上の細菌が存在しています。

歯をよく磨く人で1,000~2,000億個、歯を磨かない人では4,000~6,000億個の細菌が種類ごとにまとまりを作ってびっしり口腔内に生息しています。

この様相は、まるで植物が種類ごとに集団を作って群れている花畑の様子にたとえられ、口腔フローラ(お花畑=flora)と言います。そして、口の中に住み着く細菌の数が決まっているので、細菌たちがイス取りゲームをやっているようなものなのです。

一度口の中の悪玉菌(ジンジバリスという歯周病を起こす菌)がイスに座ってしまうと、善玉菌(ストレプトコッカス サリバリウスK12)を取り入れても、イスに座ることはできません。
口腔フローラの様相は、人によって違いがあるので、歯周病治療においては科学的検査に基づいて歯周病菌の数や種類を検査し評価した上で治療を考える必要があるのです。

歯周病治療の歴史

ここで歯周病治療の歴史について説明いたします。
1965年LOEらの研究により歯周病治療のターゲットはプラークであり、プラークの総量のコントロールが重要であると立証されました。 つまり、歯間ブラシや歯ブラシでプラークの量を減らすことを治療のメインにしたのです。

1970年代になると歯周病の原因となる歯周病菌が確認され、歯周病菌の除去のため抗菌薬の投与がおこなわれました。
歯周病の原因は歯周病菌ですので、当然のことですが一時的に歯周病は改善されます。しかし、その後再感染をおこし抗菌薬の投与が1~2ヶ月の長期にわたってしまうことで、消火器系の副作用や耐性菌の問題が指摘されるようになり、歯周病に抗菌療法は好ましくないというイメージになってしまいました。

歯周ポケット内に存在する歯周病菌はバイオフィルム(バリアを作り抗菌薬の効力を失くす)を形成しており、当時用いられた抗菌剤ではバイオフィルムの深部へ浸透しずらいことが、再感染の原因でした。

それならばと、1995年、ベルギーカトリック大学のQuirynenがクロルヘキシジンという洗口液を用いて短時間のうちに歯のプラークと歯石を除去することをおこないました。この実験では歯周病の状態はかなり改善されましたが、出血が多量にあり、歯周病菌が血管の中に入る菌血症がおこり、術後に発熱を起こすという問題がおきました。

そこで薬を使用した治療方法が今一度見直されました。

現在は口腔内から歯周病菌を完全に排除しようとする考えではなく、プラークの中に歯周病菌が存在していても歯周病を発症しなければ良いという考え方に移りつつあります。

プロバイオティクスと歯周病

現在の考え方としては、口腔内に多少の悪玉菌がいても良いのではないかということです。 そして安定した口腔フローラを得るためにプロバイオティクスという概念に注目しております。

プロバイオティクスの定義は、口腔フローラを改善し、宿主に有益な健康効果をもたらす微生物とそれらの増殖・促進をもたらす生きた微生物ということです。
つまり、悪玉菌をイス取りゲームから追い出して、そのイスに善玉菌のプロバイオティクスを座らせて良い口腔フローラを作るということです。

私が考える歯周病の治療方法を庭の雑草のイラストで説明します。

庭には色々な種類の雑草がはえています。

雑草

左の図は雑草を草刈りで一生懸命刈り取っているのですが、根っこが残っているので1ヶ月後にはまた同じように雑草だらけの庭になってしまいます。
これはまるで私達が日ごろ行っている歯のブラッシングと、保険治療で行う歯石取りのイメージと同じです。

お口の中の見えている所の歯のお掃除で一旦は改善されますが、歯周ポケットという歯と歯肉の間の溝に歯周病菌が残ったままですので、また2~3ヶ月後には同じような状況になってしまいます。

右の図は、私の医院で実際に行っている歯周内科治療のイメージです。

水やり 雑草がはえている上に水をかけて、土が柔らかいうちに1本1本根っこごと刈り取ります。そして雑草がはえないうちに種を蒔いて美しい花を咲かせます。この美しいお花畑を保つために時々雑草を取りのぞきます。

歯周内科治療では、まず歯周病菌を除去する前に、どんな種類の菌がどれだけいるかを調べる歯周病菌検査をし、その結果から投与する抗菌薬を選定します。
服用後の菌が弱っている間に除菌をしてしまいます。そして除菌後、悪玉歯周病菌が除去されているかもう一度検査をして確認しています。
そして再び歯周病菌が住みつかないうちに善玉菌を住まわせて、お口の中全体を健康な状態にしてしまいます。イス取りゲームで善玉菌を住まわせてしまえば悪玉歯周病菌の侵入をふせぐことができます

花畑

山崎DR

そして、この状態を維持する為に、3ヶ月に1度お口の中のケア・メンテナンスをして、再び歯周病菌におかされないようにしていきます。

お花畑の雑草取りをするイメージです。


山崎歯科医院 院長:山崎 明