認知症や脳梗塞も!?歯周病が全身に与える影響
寿命と健康寿命
「寿命」と「健康寿命」の違いをご存知でしょうか?
寿命は人が生まれてから亡くなるまでの期間のことで、健康寿命とは、健康に生活を送れる期間を指します。単に長生きをするのではなく、心身共に自立し、いつまでも健康に暮らすためには、食事や運動、生活習慣のほかに、歯の健康を守ることもとても大切です。全身の病気と同じで、お口の中の不調も早期発見による治療や定期検診が重要です。
健康寿命の後の期間=介護が必要になる期間
健康寿命は、「健康な期間」ですので、健康寿命が終わってしまった後の期間は、「不健康な期間」ということになります。これは一般的に寝たきり等で介護が必要になる期間です。7段階ある要介護区分のうち要介護1〜5になる原因として、次の4つがあげられます。
- 認知症
- 脳血管障害
- 高齢による衰弱
- 骨折・転倒
【参考文献】厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」
これらの4つの原因により、寝たきりになるリスクは高くなります。
しかし、これは逆に言えば、4つの原因を防ぐことによって健康寿命をのばすことが可能だということです。
歯周病と認知症
歯周病は「国民病」といわれるほど、多くの日本人がかかっているとされる病気です。歯周病はお口の中の健康を妨害するだけでなく、心筋梗塞や糖尿病など全身の病気の原因にもなるとても怖い病気です。近年では、歯周病が認知症の発症のリスクを上げることもわかってきました。
「アルツハイマー型認知症」は、アミロイドβというたんぱく質が脳内に蓄積することで発症します。このアミロイドβが蓄積する原因として、歯周病があげられます。
また、ほとんどの歯を失っていながら、入れ歯などを使用せず歯がない状態を続けていると、自分の歯が20本以上残っている人に比べて、認知症発症のリスクがおよそ1.9倍に高まるという研究結果もあります。その調査によれば、よく噛めない人は、何でも噛める人よりも認知症発症リスクが高く、その差は1.5倍にも上るとされています。
認知症予防という意味でも、歯周病の予防が大切であることがわかります。
歯の健康と脳血管疾患
脳血管疾患は、介護が必要になる主な原因のひとつですが、突然死を招くこともある恐ろしい病気です。なんと、歯を失うことは、この脳血管疾患にもつながるということがわかっています。よく噛めないことは、食べ過ぎを招きやすくなります。食べ過ぎが高血糖や高脂血症の原因になることはもちろん、肥満が動脈硬化を促進させたり、塩分過多が血圧に影響したりするなどで脳血管疾患のリスクが非常に高くなるのです。また、脳血管疾患は歯周病とも関係が深く、歯周病の人はそうでない人に比べて、脳血管疾患になる可能性が2.8倍にも高まることがわかっています。お口の健康は、全身の健康維持に大きく関わっているのです。
定期検診をすると、生涯医療費が安くなる
定期的に歯の健診を受けている人は、生涯医療費が平均よりも安くなることが分かっています。トヨタ関連部品健康保険組合が52600人を対象に行った調査では、歯の定期検診を受けているグループが、生涯医療費の一般平均を下回りました。定期検診をしている分、48歳までは一般平均よりも医療費が高くなっているものの、49歳からは一般平均よりもかかる医療費が安くなっていきます。65歳の一般平均は35万円ですが、歯科で検診を受けているグループは平均20万以下であり、15万円もの差がついています。歯の定期検診を受けず、むし歯や歯周病になると、噛みやすい食べ物を好むようになります。その結果、食事のバランスが偏ります。それが結果的に糖尿病や骨粗しょう症などの生活習慣病の原因になるのです。つまり、歯のケアは、全身の健康状態に関わる非常に重要なことであるといえます。
定期検診と歯の残存数
下の絵は、年代別の日本人の歯の残存数を表しています。
歯医者さんは「痛くなったら行く」という考え方が根付いてしまっている日本では、定期検診の重要性がまだまだ知られていません。しかし、このままでは絵のように、80歳になったときには半分以上の歯を失ってしまうのです。
美味しいものを、生涯ご自分の歯で食べたいですよね。
健康寿命を延ばすために、歯の定期検診を
むし歯や歯周病を治療することは、もちろん大切なことですが、痛いところがなくても、定期的にお口の状態を歯医者さんで確認し、健康な歯を保つことが、重大な病気のリスクを下げることにつながります。
定期検診で、健康寿命を延ばしましょう!